常滑焼で入れたお茶はまろやかになると言われ、常滑焼といえば急須が有名。そしてイメージするのは、おばあちゃんが愛用していたあの朱色をした急須…という人も多いのでは?
しかし、最近の常滑焼はポットスタイルのパステルカラーが大人気。「常滑焼で飲むお茶はおいしい!」の伝統はそのままに、とってもかわいく進化中。そんな古くて新しい常滑焼の中から、私が実際に使っているおすすめのうつわと常滑に来たら立ち寄りたいお店をご紹介します!
古くて新しいやきもののまち常滑
▲土管坂
常滑焼は平安時代末期の12世紀頃から始まったとされ、中世から現代まで生産が続く日本六古窯のひとつ。
知多半島で採れる鉄分を含んだ朱泥(しゅでい)と呼ばれる土で作られる急須や甕(かめ)などが伝統的な常滑焼として知られています。また昭和の頃までは土管やタイルなどの生活陶器も盛んにつくられており、最盛期の昭和20年頃には約400本の窯の煙突があったとのこと。
▲やきもの散歩道
が、時代は変わり、昭和の頃に窯がひしめいていた小高い丘は今、当時の遺構を残す街並みの中に洒落たギャラリーや窯元が連なり、「やきもの散歩道」として全国からやきもの女子が訪れる観光名所になっています。
パステルカラーがかわいい「TOKONAME STORE 」
常滑駅から歩いて約10分。「TOKONAME STORE」は、かわいらしいパステルカラーで従来の常滑焼の渋いイメージを変えたお店です。
一番人気!「TOKONAME TEA FAMILY」
ここの一番人気はなんといっても、常滑の茶器の伝統を受け継いだ「TOKONAME TEA FAMILY」シリーズ。
滑らかな陶肌にピンク、黄、水色などのパステルカラーとまるまっこいデザインが鼻血出そう…!なくらいにかわいいシリーズです。
横からだけでなく、上から見ても、どこから見ても文句なくカワイイですよね!まるでテーブルの上に咲くカップのお花畑。
カップ、 ポットそれぞれ大きさは3種類
TEA FAMILYのカップのラインナップは、飲み口が薄いカップ小と丸いフォルムのカップ中に、それに取っ手がついたコーヒーカップの3種類。
ポットはカップ小が2杯の容量のポットS、3杯分のポットM、4杯分のポットL、とこちらも3種類あります。
滑らかな触り心地!お茶やコーヒーが「まろやか」に
TOKONAMEシリーズでお茶やコーヒーを飲むと実際に美味しくなります! コクが出るというのか、大きく散らばっていた味が集中するというのか、味の密度が濃くなるというか…。とにかく、美味しくなるんです!
また、この手触りもすごく気持ちいいんです。釉薬コーティングのない滑らかな陶肌は土の温もりが感じられ、ほっぺでスリスリしたくなるほど。
常に滑らかで、これぞ名前どおりの常滑焼です!…よね…?
私が持っているのは、こちらのカップ小のセット。
丸っこいフォルムのカップ中の方が人気とのことですが、この薄くて外に広がっているへりの具合がとにかく飲みやすいのです!一度使ったらもう、手放せなくなりますよ。
山源陶苑からTOKONAME シリーズ誕生
かわいくて機能的なTOKONAMEシリーズの生みの親が山源陶苑3代目の鯉江優次さん。祖父、父の代と山源陶苑が培った常滑焼の技術を見事に今の時代にマッチさせてくれました。
昭和の頃より1/3以下にまでに減ってしまった常滑の窯。そんな状況に危機感を持った鯉江さん。普段の暮らしになじみ、かつ未来を担う子供たちの興味を惹きつけるような常滑焼にしたい、とTOKONAMEシリーズを立ち上げたそうです。
▲水色の「TOKONAME」の陶土
知多半島で多く採れる白泥という陶土をベースに色粉を混ぜ、型に流し込み成型します。パステルカラーは調合度合いが難しく、TOKONAMEの優しく淡い色を出せるのは現在、鯉江さんと弟さんの2人しかいないとのこと。
そして、あの滑らかな質感は細かい手作業によって生み出されています。釉薬を使わない分、陶肌をより滑らかに仕上げる作業が必要で、こうやって金属のヘラみたいなもので焼成の前に薄ーく削っておかなければなりません。
TOKONAMEが持つ色とクオリティは海外からも高く評価されており、ベルギーとオランダを拠点に世界のTOKONAMEとして着々とその位置を築きつつあります。が、こういった細かい手作業で作られているため大量生産ができず、現在は発注を受けても納品まで数か月待ってもらっている状態なのだそう。
じわじわ人気!調味料やストック食材に TOKONAME CROCK
そして今TEA FAMILYに近づく勢いで人気なのが、このTOKONAME CROCKシリーズ。crock=甕(かめ)という名前どおりストック食材に適した保存ポットで、小さめのこちらは塩や砂糖などの調味料がサラサラのまま保存できるスグレモノ。
味噌や梅干し、漬物などを保存する甕の製造技術に長けていた常滑焼。その伝統を受け継いだCROCKはスタイリッシュで機能的なポットとしてじわじわ人気上昇中。
シンプル可愛い好きな私には、その名前どおりのド”ツボ”なジャー!ひとつ欲しい!!
しかし、梅干しや漬物を作れるスキルがない…(泣)。
オーブンレンジOK!「Mom Kitchen」シリーズ
釉薬を使ったMOM kitchen シリーズは丈夫で使いやすく、オーブンOKなグラタン皿などテーブルのセンターに可愛くはまります。
サンドイッチを積んだり、お菓子を盛りつけたり、ホームパーティーの主役になりそうなパエリアパン。
ひよこのような可愛いフォルムのミニピッチャーは並べて部屋のインテリアにも。
何気ない普段の暮らしを楽しく!がTOKONAME STOREのコンセプト。予約しておけば陶芸体験もできます。自分が作ったうつわで食卓を彩るのも楽しいですよね。
水玉模様がかわいい「憲児陶苑」
TOKONAME STOREから南に歩いて20~30分のところにある憲児陶苑。お店の中には彫ったような水玉模様とレトロな雰囲気が人気の可愛いうつわがいっぱい。
ひとつひとつが違う表情 マーブル模様の練り込み技法
憲児陶苑のうつわの特徴は「練り込み」と呼ばれる技法。白、赤、緑の3色の陶土を練りこんで、木目のような、大理石のような独特のマーブル模様を陶肌に出現させます。
うつわと同じ、ほのぼの優しい雰囲気の憲児陶苑2代目の堀田拓見さん。(現在、憲児陶苑のうつわは全て堀田さんの手から生まれています。)
「僕のうつわは表情がひとつひとつ違うんです。3色の土を練り込んで、それを小さな玉に分けてから作るので、土の混ざり具合、練り具合で、同じお茶碗でも表情が変わります。それに、同じように仕上げたつもりでも、焼いた時の窯の具合によって色がまた変わってきちゃうんですよ」
確かに同じデザインのものでも、内側を覗くと色味がつよいもの、模様があまり出てないもの、などなどかなり違います。なるほど、憲児陶苑のうつわには一期一会の面白さがありますね。
軽くて丈夫でコーヒーが美味しい!さらにビールも美味しい!
軽くて持ちやすくて、手触りよいこちらのフリーカップは私のお気に入り。
釉薬を使っていないのでTOKONAMEと同じく、お茶やコーヒーの味がまろやかになります。またビールを入れると泡がモコモコとたち、消えにくい。つまりビールも喉ごしよく、よりおいしく飲めちゃうんです。
それにレンジOKなので、これからの季節は熱燗やホットミルクにも。守備範囲が広いカップですので家族分揃えておくと便利です。
ドット模様のうつわができるまで
練り込み技法のうつわは、成形直後は右のお茶碗のように、3色の陶土が混ざった色になっています。
それをろくろにかけて内部層のマーブル模様が出るまで削っていきます。
次に、カラー陶土と合わせます。この薄茶色は焼成するとピンク色になるのだそう。
そして色陶土の部分をこのように削って、下のマーブル模様を出していきます。(撮影のため、失敗作を使ってデモでやっていただきました。)
そして取っ手を付けて窯で焼き上げれば、ドット模様のマグカップの完成です!と、このようにかなり手のかかる工程を経て出来上がるシリーズです。
ちなみに焼き上がりは25%も縮んでしまうそうで、焼成前と比べるとこんなに大きさが違います。
手になじむお茶碗は2サイズ2デザイン、カラーは7色
人気のお茶碗は写真上の大サイズと下の小サイズの2種類。
子供にも持ちやすい小サイズは、赤ちゃんのお食い初めプレゼントとしても人気。小さな頃から土の温もりを感じるホンモノの食器でごはんを食べれば、大地の恵みに自然に感謝できる素敵な子に育ちそうですよね!
デザインは水玉模様と横縞の2種類。カラーはピンク、黄、黄緑、グレー、黒、赤、水色の7種類あります。
練り込みのベース色は白色ですが、焼成時に窯の中に炭を入れるとこのように紫色になるのだそう。
土の持ついろんな表情が楽しめる憲児陶苑。予約しておけば工房見学もできます。
ランチもOK!カフェ&雑貨 「ni:no(ニーノ)」
焼きもの散歩道のスタート地点、陶磁器会館向いにある「ni:no (ニーノ)」。
ランチもできるカフェ兼雑貨店で、常滑在住作家さんたちのうつわを扱っています。
1階が雑貨店、2階がカフェになっており、レトロ感漂う空間で地元産の食材を使ったランチと手作りスイーツがゆっくり楽しめます。
▲さっぱりした甘さの、黒糖のレアチーズケーキとコーヒーのセット。
食卓をかわいく彩る原田晴子さんのうつわ
落ち着いた可愛さと人気女優さんのインスタグラムに載ったことで、人気上昇中の原田晴子さんのうつわ。
渋めのカラーに小さなカップやリンゴなどが散ったデザインは、和洋中問わず使いやすく、たとえ失敗してしまった料理だとしても(!)美味しそうに見せてくれます。また割れにくく丈夫なので、料理下手さんやぶきっちょさんにもおすすめしたいうつわです。
原田さんのうつわはゆっくりと時間をかけて焼成されているため、一般的な陶器より陶土の密度が高いのだそう。深部までがっちりと焼き上げた原田さんのうつわは、割れにくくかつ汚れもつきにくいので、多少乱雑に扱ってもヘコタレません。もちろん、食洗機、オーブン、レンジもOKです!
でも、直火はダメなのね…と思った、そこのあなた!
大丈夫です!アヒージョなどに使いたい直火OKなパンもラインナップしています。
重ね使いも楽しい原田さんのうつわは、こうやって休日にのんびりブランチしてみたいなぁ..~~
などなど、いろいろ妄想が広がり、あれもこれも欲しくなってしまいます。キケンキケン…。
かわいくて機能的な原田さんのうつわはni:noで購入できますが、人気のため品切れの場合もあります。欲しいものが決まっている場合は、ni:noまで問合せをしておいてくださいね。
(※原田さんの作品は常滑市内ではni:noのみの取り扱いですが、今回は特別に原田さんのアトリエで撮影させていただきました。)
他作家さんたちのうつわも
ni:noでは他、素焼き感がかわいいチェンシーいづみさんの作品なども扱っています。
落ち着いた和の空間 「ぎゃらりー宗則窯」
ni:noから歩いて5分、やきもの散歩道の途中にある「ぎゃらりー宗則窯」には、店主の森下宗則さん手造りの和モダンな常滑焼が並んでいます。
釉薬を使わない常滑焼で飲むとお茶やコーヒーがいっそう美味しくなりますが、ここ宗則窯は特に、お酒が美味しく飲めそうなうつわが揃っています。
スタイリッシュなこのフリーカップは、焼成すると朱色になる朱泥を3度焼き上げることで、金彩がオシャレな黒色の常滑焼へと仕上げています。
ビールを注げばきめ細かい泡が立ちそうだし、飲み口も薄いので優秀なビールタンブラーになってくれそうです。他にも、香りがふくよかに立ちそうなロックカップ、ぐい飲み類など、お酒好きさんには嬉しいうつわが揃っています。
セレクトショップ morrina(モリーナ)
最後に紹介するのは、宗則窯と同じやきもの散歩道沿いにある、うつわと暮らしの道具のセレクトショップ「morrina(モリーナ)」。
明治時代の土管工場を利用した雰囲気ある店内には常時16人の作家たちの作品が並び、常滑焼の歴史と技法に沿ってディスプレイされています。
高名作家さんたちのハイセンスな作品を揃えていますが、自分の感性にあったものを選んでもらいたいとの思いから、あえて作家の名前を目立たせない並びにしているとのこと。
うつわだけでなく、テーブルを彩ってくれる箸置きも可愛くてオシャレです。
焼きもののまち常滑は中部国際空港セントレアからすぐ!
焼きもののまち常滑市内には中部国際空港セントレアがあります。空港がある人工島から電車で約5分、橋を渡ってすぐの場所に常滑のまちが広がっています。
今回紹介したお店だけなら、焼きもの散歩道Aコース(1.6㎞・所要約1時間)にプラス2時間もあれば、のんびり歩いて回れてしまいます。飛行機の待ち時間などあれば、常滑でレトロな街並みを散策しながら、お気に入りのうつわを探してみるのはいかがでしょう。
TOKONAME STORE【とこなめすとあ】
営業時間:11:00 – 19:00
定休日:水曜日
Web:http://tokonamestore.com/
住所: 愛知県常滑市原松町6-70-2
憲児陶苑【けんじとうえん】
営業時間:9:00 – 18:00
定休日:不定休
Web:http://kenjitouen.com/
住所: 愛知県常滑市山方町1-21
ni:no【にーの】
営業時間:10:00 – 17:00
定休日:木曜日
電話:0569-77-0157
住所: 愛知県常滑市陶郷町1-1
ぎゃらりー宗則窯【ぎゃらりーむねのりがま】
営業時間:10:00 – 17:00
定休日:不定休
住所: 愛知県常滑市栄町2-36
morrina【もりーな】
営業時間:10:00 – 17:00
定休日:水曜日
住所: 愛知県常滑市栄町7-3
おまけPHOTO
招き猫生産量日本一のまち常滑を見守る巨大な招き猫「とこにゃん」。
招き猫39体、実猫11体が飾られている「とこなめ招き猫通り」。
とこにゃんも招き猫通りも常滑駅からやきもの散歩道に向かう途中に現れます。
やきもの散歩道のスタート地点、陶磁器会館のポスト上の郵便配達さん。
廻船問屋瀧田家横のでんでん坂。
TOKONAME STOREの本体、山源陶苑の本家のうどん店「山源」。3男坊だった鯉江さんのおじいさんはこちらを出て山源陶苑をはじめたのだそう。
甘じょっぱくて懐かしい味がする山源の「味噌煮込みうどん」。